遺言の作成のご相談

遺言

皆様は「遺言」という言葉をよく耳にすると思います。
人生の晩年を迎えて「そろそろ遺言書を作っておいた方がよいのではないか…」とお考えの方も、多くおみえになられることでしょう。
しかし、いざ「遺言書」を作成してみようと思っても、いったいどのように作成すればよいのかを正確に理解できる方は、ほとんどおられないと思います。
遺言(法律的には「いごん」と読みます)は厳格な「要式行為」であり、その要式を守らずに作成された遺言書は、何の法的効力も発生させることはできません。

たとえ、遺言書(遺言を書いた人)の意見が遺言書の記載内容から明白であっても、要式を守らずに作成された遺言は、何らの効力も有しないことになってしまいます。人生の集大成として作成したつもりの遺言が何の効力も有しなかったということになれば「死んでも死にきれない」と思います。遺言には様々な種類のものがありますが、ここでは、最もポピュラーである2種類の遺言についてご紹介させていただくことにします。

自筆証書遺言

自筆証書遺言とは、遺言者(遺言をする人)が、遺言の全文・日付・氏名を自書し、これに押印することによって成立する遺言です。

有効要件

  • 1遺言者が遺言書のすべての文章を自筆(手書き)すること。 誰にどの遺産を相続(遺贈)させるのかをすべて自筆で記載します。パソコンを使って作成した文章はダメです。他人に代筆してもらった文章はダメです。遺産の目録をパソコンで作成し、その他の文章を手書きで作成してもダメです。CDやDVDに口頭でメッセージを入力したものではダメです。 自筆証書遺言が数ページに渡る場合であっても、一通の遺言書として作成されている場合には、その日付・署名・捺印は、一箇所にされていれば有効です。契印(割り印)がされていない場合や封印がされていない場合でも有効です。
  • 2作成年月日を明瞭に記載すること。 和暦、西暦は問いません。(例:平成30年4月1日/2018年4月1日)平成30年4月吉日という表記の仕方ではダメです。
  • 3氏名を自書し、押印すること。 自分の氏名を記入し、押印します。押印は、認印や拇印でもかまいませんが、できる限り実印で押印してください。
自筆証言遺言の長所:メリット
いつでも、自分ひとりで手軽に作成できます。遺言の内容や存在を自分だけの秘密にしておくことが可能です。費用も必要ありません。なるべく実印で押印し、遺言書と印鑑証明書を封筒に入れて、実印で封印し、封筒にも「遺言書」と表記し、氏名を記載する方法をとることをお薦めします。
自筆証言遺言の短所:デメリット
遺言書を滅失したり紛失したりする恐れがあります。また他人に偽造・変造される恐れがあります。遺言書が封筒に入っている場合には、家庭裁判所において、遺言書の封筒を開封する必要があります。さらに、家庭裁判所において検認(相続人全員が裁判所に呼び出させれ、それらの人たちの面前で、遺言の内容を裁判官とともに確認する手続き)が必要となり、時間と費用がかかります。遺言書に「遺言執行者(遺言の内容を実現する人)」が記載されていない場合は、遺言執行者の選任の申立てを家庭裁判所に対してしなければ、遺言の内容が実現できません。

公正証書遺言

公正証書遺言とは、遺言者が司法書士等の専門家と相談しながら遺言書を作成し、その原案をもとに、公証人が遺言を公正証書にし、その遺言の内容を公証人が遺言者に口頭で確認したうえ、遺言者および証人2名が、その遺言書に署名・捺印し、公証人が認証することによって成立する遺言です。

公正証書遺言の長所:メリット
司法書士等の専門家に相談しながら作成できるため、遺言の意思が書面に上手に反映され、かつ、法律上有効な遺言書を作成することができます。
また、公正証書という公的な文書によって作成され、その原本が公証役場に保管されるため、紛失や滅失、偽造や変造の危険もありません。さらに公正証書遺言の場合は、自筆証書遺言の場合とは異なり、家庭裁判所における検認の手続きが不要となるため、簡易的かつ速やかに遺言の内容が実現されます。
公正証書遺言の短所:デメリット
公証人や司法書士等への報酬が発生します。また、証人2目に遺言の内容を知られてしまうことになります。
ただし、通常は「司法書士」と「その事務員」が証人となりますので、相続人等に遺言の内容を知られる危険性はありません。

公正証書遺言を作成するための必要書類

  • 1遺言者本人確認資料印鑑証明書(発行後3か月以内)実印 遺言対象財産(不動産)固定資産税納税通知書又は固定資産評価証明書遺言書中で不動産の特定をする…登記簿謄本 遺言対象財産預貯金通帳の写し証券会社の保有資産一覧表出資証券の写し共済証書又は保険証書の写し その他入院中などで公証役場に来所不可…診断書
  • 2受遺者相続人相続人遺言者との関係がわかる戸籍謄本等
    ※相続人が甥、姪など、その本人の戸籍謄本だけでは遺言者との続柄が不明の場合その続柄の分かる戸籍謄本
    その他の者住民票受遺者が法人の場合…その法人の登記簿謄本
    ※公に認知されている公益の団体…不要
  • 3立会証人住民票又は運転免許証の写し認印 ※住所、職業、氏名、生年月日のわかる資料
  • 4遺言執行者住所、職業、氏名、生年月日が確認できる資料

よくある質問

遺言は何歳から作ることができますか?
15歳に達していれば、未成年であっても作成することができます。
遺言により遺産を渡すことをなんと呼び、資産の譲受人を何と呼びますか?
遺言により遺産を渡すことを「遺贈(いぞう)」と呼び、遺産の譲受人のことを「受遺者(じゅいしゃ)」と呼びます。
また、遺言をする人の事を「遺言者(いごんしゃ)」と呼び、遺言の内容を実現する人のことを「遺言執行者(いごんしっこうしゃ)」と呼びます。
どのような場合に遺言書を作成することが多いですか?
相続人の中に行方不明者がいる場合や、子供同士の仲が悪く遺産を巡る紛争が生じる可能性が高い場合に作成される人が多いです。また、配偶者や子供のいない単身の方が、甥・姪その他の第三者に対して遺言をされるケースも散見されます。
自筆証書遺言と公正証書遺言のどちらがよいですか?
この点に関しては、前述したようにメリット・デメリットがあることを考慮したうえで、遺言者の方が自分で決めていただくしかないと思います。ただ、専門家としていえることは、自筆証書遺言の場合は有効要件を満たしていないケースが多く見受けられるということと、家庭裁判所による検認の手続きが必ず必要となること、また、自筆証書遺言の場合は、遺言執行者が定められていないケースが多いため、検認とは別に、遺言執行者の選任の申立てを行わなければならないケースが多く見受けられるため、「私見」としては、遺言書の保管の観点からも「公正証書遺言」を作成した方が良いと思います。